ご質問
鬼瓦の上にスズメが止まっているのに気付き、そこにピントを合わせて撮ろうとしたら飛んでしまったという場面の写真です。
このような屋根を撮ろうと思ったら、私はf8に設定していると思いますが、スズメに気付いて設定を変える間もなくそのまま撮影しました。
レンズ 35mm単焦点 f2.8 SS1/4000
f2.8とかなり値が小さいのに、お寺の瓦がそんなにボケていないように見えます。これは一体どうしてなんでしょうか。
自分のイメージではf2.8ではピントを合わせた場所以外はボケてしまうと思っていました。
回答
背景がボケた写真を撮りたくて一眼レフを購入された方もいるくらい、写真に撮ってボケは大事な要素です。
一方で、このボケをちゃんと理解してコントロールできる方は、意外と少ないのです。
「望遠レンズを使って、絞り値を開放にしてなんとなく背景がボケた!」
と、喜んでいるうちはまだ初心者です。
中級レベルへのステップアップとして、このボケ具合をコントロールできるようになりましょう。
何度かお伝えしていますが、ボケの量は被写界深度と呼ばれます。被写界深度とはピントが合う範囲で、cmやmで表されます。
この被写界深度は次の要因で変わります。
・絞り値 … f値が小さいほどボケる
・焦点距離 … 望遠ほどボケる
・ピント位置 … 近いほどボケる
よく「絞りを開けるとボケる」と言われますが、シチュエーションによっては焦点距離とピント位置の方が、はるかにボケに影響することがあります。
今回は
・35mmという短めの焦点距離のレンズ
・ピント位置がカメラから離れている
の2点が効いていますね。
写真から推測するに、カメラと屋根の距離は6メートルくらいでしょうか。
今回の撮影条件
・焦点距離 35mm
・絞り値 f2.8
・ピント位置 6m
・APS-C
では、被写界深度は4.6~8.5mですので、屋根の奥行きはほぼこれに収まります。したがって屋根がボケたように見えないというわけです。
この被写界深度は計算で簡単に出てきます。詳しくは、こちらをご覧ください。
カメラ⇔被写体⇔背景の位置関係でボケ具合はかなり違います。
ちなみに、今回の条件で20m先にピントを合わせた場合、被写界深度は 10~∞(無限遠)になります。
これは、10mから先はすべてピントが合っている(ように見える)という状態です。いわゆるパンフォーカスですね。
数字ばかりでよくわからない・・という方に面白いものを見つけました、DOF Simulator(被写界深度シミュレーター)です。
DOF Simulator http://dofsimulator.net/en/
結構笑えるので、実際にグリグリ操作してみてくださいね。
中級レベルへのステップアップはこの被写界深度を感覚レベルで身につけることが大切です。
それには、被写界深度を決める焦点距離を固定して、「絞り」と「ピント位置」だけでボケ具合を体得することが近道です。
ズームレンズをグリグリ回していては絶対に身につかない感覚です。